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釣り日記 人命救助の話

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釣り日記 人命救助の話

平成5年11月頃の事件だったと思う。

人命救助


私のクロダイ釣り(へち釣り)の師匠であり、いつもレジャーボートで連れ出してくれるT氏が、土曜日の午前10時頃、我が家に迎えに来た。
行き先は勿論、久里浜の東電堤防(通称)で、狙いはクロダイである。
横横道路日野インターから高速に乗り、ボートを係留している久里浜平作川に着いたのは、正午少し前だった。もう一人の釣友は、準備万端整え、タバコをふかしていた。

『お待たせ!』と挨拶をして、これからの楽しみを互いに噛み締め合い、ボートに乗ろうとした時、ボラが水面で跳ねた。
『ん?これは幸先がよくないぞ…』
私の経験では、ボラが水面で跳ねる時に、いい思い出がないからである。
いやな予感を胸に、開門橋をくぐって港に出ると、“うねり”があった。
南にある低気圧の影響だろうと思われるが、予感が的中したようだ。

行って駄目なら引き返そうということで、低速で堤防に向かった。
堤防はと見ると、時折、先端部分にしぶきが上がっていた。
近づくと、渡し舟で来た先客が十数人竿を出していた。
暫く様子を見ていると、時折堤防を波が洗い、いささか危険だと判断したので、手前の小さな堤防に上がることにした。
ここは、釣れてもウミタナゴかカサゴくらいのもので、あまり魅力はないが、いつもの堤防に上がれない時には重宝な所である。

そこに上がって東電堤防を見やると、釣り客が一斉に堤防付け根の方へ移動し始めた。
堤防中ほどには、崩れた個所があり、50cmほど低くなっている。
そこを“うねり”が循環的に乗り越え、ドドーッと堤防内側に流れ込んでいる。
一団は、タイミングを計りながら難所をわたりかけたが、最後尾の2人が流れに足をすくわれて海に落ち、一挙に流された。
それを見ていた師匠のT氏は、堤防から下りてボートに飛び乗り、すばやくエンジンをかけて救助に向かった。
一人は救命胴衣を装着しており、大事な竿を左手に持って浮かんでいたが、一方、救命胴衣を装着していない人の方は、頭が水面から出たり沈んだりしている。
師匠はその人に近づき、手をつかんでボートに引き上げようとしているが、重くて上げられないようだ。
我々も焦ったが、どうにも出来ない。

その時、エンジンの音が聞こえてきた。
振り返ると、釣り客を乗せた渡船業者の船が見えた。
声を出しても聞こえる距離ではないので、手振りで状況を伝える。
何回か繰り返すうちに、乗船客が気づいたのか、エンジンの音が大きくなり、スピードを上げたようだ。釣り客の誰かが、私のパントマイム(?)で非常事態を察知して船頭に伝えたのだろう。

海に落ちた釣り客は、数人掛りで船に引き上げられ、港に引き返して行った。
堤防に残っていた釣り人は、堤防付け根に移動して座り込んでいた。
もう釣りをする気になれなかったのだろう。

一仕事終えて帰ってきた師匠は、「着込んでるし、海水を吸ってるし…、重くて一人じゃ上がらないよ。顔色なくグッタリしていたな…」とつぶやいて堤防に座り込んだ。
ご苦労さまでした。

師匠の話だと、過去にも何人かの人が、この場所で水難事故にあっているらしい。
その日も、渡船業者の釣り客が引き上げた後、いつもの堤防に移動して夜釣りをするつもりだったが、“うねり”がおさまりそうもないので、早々に引き上げた。

その後の話によると、師匠は渡船業者から『有難うございました』とあらためてお礼を言われたらしい。


(記:副代表)


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釣り好きのまる工房副代表が、釣りの思い出を綴っています。
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